介護で働くことへの注意点
中途で入ってきたオッサンだからこそわかることがあります。
1.会社に期待していいのは給料だけ
新卒で入ってきた若者にありがちなミス。それは「自分のことをもっと認めてもらいたい」という証人欲求を抑えきれない事。その結果、上司や周りの職員へのアピールを重視、利用者をあまり見ていない・・・という状態になりがちです。
おっさんであり、元自営業者であり、郵便局というでっかい組織の中にもいたのでわかるのですが、会社に給料以外のことを期待してはいけません。
会社がこちらに期待しているのは、仕事を回す労働力ということだけです。それ以上の能力はいらんのです。かえって邪魔なのです。仕事中は労働力に徹しましょう。
2.この仕事に正解はない
人間を扱う仕事だけに、正解はありません。介護知識や経験で、正解と思われること、があるだけです。
それを踏まえたうえで、正解と思われる介護を求めていく姿勢が重要です。
3.ノイローゼになりがち
抑うつともいえますね。人間関係がいろんな方向から襲い掛かってきます。職場内だけでなく、利用者との人間関係も含まれます。
自分の心を守るためには、心をオフにするスイッチを持つことです。
4.楽しむポイントをつくる
やることは生活のサポートだけです。ならば楽しんだもの勝ちですよ。食事、排泄、入浴を回しながら、おもしろいことを発見しましょう。
5.介護以外のこともアンテナを張る
よく「この仕事は安定している」と言われますよね。たしかに、医療は発展し、老人は増え、この仕事は安定して続くように見えます。
おなじようなことを郵便局に入った時に言われました。時代って変わるんですよ。そして必要なマンパワーも変わっていきます。郵便がメールに置き換わって、ゆうちょやカンポの信用もゆらぎ、現場は窒息しそうでした。
そんなとき、人や会社は「努力して乗り越えよう!」とします。弱い人は生き残れません。私も生き残れませんでした。
介護の仕事だけで何十年も生きようとせず、介護以外でのお金の稼ぎ方を見つけるべきです。
飲食業から介護に転職して1年が経ちました(43歳)
早いもので、飲食業から介護に転職して1年が経ちました。
42歳だったおっさんは43歳になり、職場には新人も入ってきました。
夜勤にも入るようになり、体を含めていろんなことが変化した1年だったと言えます。
コロナで私の様な人もたくさんいるでしょう、これから転職を考えている人もいるかもしれません。
そんな人に向けていろいろ記録していきます。
入った施設
私が入職したのは特養といわれる施設です。
特別養護老人ホームの略で、介護度の重い人が入る「終の棲家」です。
身体を全く動かせない人から、認知症がひどく10秒前のことを忘れる人もいます。
ただ、私の施設の雰囲気は明るく、仕事も比較的自由にやらせてもらえるところでした。
他の施設の話を聞いたり、本で知ったところによると、ブラックな施設も少なくないようです。
仕事内容
排泄、食事、入浴の3大介護を回すことです。
入居者さんのライフサイクルに合わせて動くのですが、覚えるまでは大変でした。
それでも、だいたい2か月ぐらいで一通り動けるようになりました。1人分のシフトになったのもこれぐらいです。それまでは先輩職員のサポートがありました。
でも勉強は終わりません。
1人1人の情報。介護技術。その他の雑務。ちょっとしたコツなど。
覚えるべきことは無限に湧いてくるのです。
体力
介護は体力労働でもあります。
1日中動き続けるため、家に帰るとすぐに倒れ込みたくなります。
腰をやる職員も多く、体へのケアはより気を付けるようになりました。
ランニングをはじめ、基礎体力を高めています。
牛乳とプロテインを摂取するようになりました。
お金
給料は安く、それが原因で離職する職員も少なくありません。
政府による援助金などもありますが、それでも薄給です。
ですが、夜勤を始めると少し変わりました。
夜勤は1回につき5000円ほどもらえます。
金額は施設によって違いますが、月4回やると2万円+になるのです。
夜勤専門で働く人もいるらしく、そうゆう人はガッツリ稼いでます。
休み
24時間365日が特養の営業時間です。
休みは少ないと思ってましたが、以外にも結構くれます。
また、遅番なら昼から出勤するため、午前中はゆったりと使えます。
夜勤の次の日は連休。どこかに旅行することも可能です。
有休も普通にくれるので、この辺りは正社員様様というところでしょう。
ストレス
介護はチームワークで行うため、どうしても人間同士のストレスはあります。
ですが、それ以上に利用者様の言動が面白くて、気にならないのが現実です。
飲食をやってきたのであれば、介護はストレスフリーに感じるでしょう。
まとめ
頑張れば頑張るほど売り上げが向上するのが飲食の世界。
介護は利用者が生活する場を回す部品になる仕事。
両者は全く違います。
どんなに頑張ったところで、施設の売り上げにはすぐに反応があるものではありません。
そのあたりの肩透かし感に戸惑うこともあるかもしれません。
誰でもできることをできるようになること。それがこの仕事を続けるコツであると思います。
それが出来るようになって、そこからさらに何かを創造する。介護職はアーティストであるという人がいます。私もそう思います。
花を飾る
ホームセンターで花を買ってきました。
名前は忘れてしまいましたが、枯れかけとうことで値下がりしており、300円で買って来たものです。それを施設にもっていき、利用者と一緒に植え替えをしました。
居室にあった植木鉢。それを借ります。なにせ半額の花ですから、いつまで持つかわかりません。でも、植え替えは楽しく、いい感じのエンタメになりました。
それから2週間が経過しましたが、枯れかけの花は復活し、満開に咲き誇っています。利用者には毎日「きれいだねー」と言われる存在になりました。
「コスパいいな」と思いました。たった300円の花がこんなにも喜ばれるとは意外です。花なんて初めて買いましたが、知識はなくても教えてくれる人が沢山いるから問題ありません。
今日もホームセンターに行き、花を物色します。私はすっかり花の人になりました。
楽しく仕事をすることのメリット
先日、とある利用者さんから「怒ってるでしょ」と言われたことがありました。私は全然怒っているつもりはなく、まあ誘導に従ってくれない利用者さんにちょっとイライラしていたぐらいです。だから「怒ってないよー」と言いましたが、どうしてそんなことを言われたのか気になりました。
こんなに一生懸命に仕事しているのに、こっちの言うことを聞いてくれない利用者さん。それなのに「怒ってる」と言われて本当に怒りそうになりました。
ああ、今日はもいいや!と吹っ切れてしまい。就寝介助なんてどーでもいいっしょ!と笑ってしまいます。寝たい?まだ眠くないでしょ?じゃあ起きてればいいじゃん!とワハハと笑いながら動いてました。
めんどくさいから、パジャマだけ着替えてて!
まだお話したい?いいよー!好きなだけ喋ってなよ!
あー腹減った!
介護拒否が始まった利用者さんにもこんな感じで接しました。「どうしたいの?動きたい?手伝ってもいいけど、俺に手伝われるからには覚悟してねー!」ワハハ!いっくよー!はい、手すりつかんでー!はい立ってー!はい着替えるよー!はい、いれば外して!はい、顔拭くよー!じゃ、寝るよー!
めっちゃスムーズに仕事が進みます。ここには書けないような下ネタを大声で笑いながらしゃべりながら、気が付けばいつもより早く終わってました。
・・・どゆこと?
と考えましたが、これはおそらく声を張ったのが良かったのでしょう。いつもは声が小さく沈み怒っているように聞こえてしまったんです。それは礼儀正しく接しようとしていたからですが、今日は吹っ切れてしまっていたので、単純に声が大きくて聴こえやすかったんです。
そう気づくと、大先輩がたの声が大きくて、ちょっと乱暴なのも納得しました。これからは大きく、そして自分らしく楽しい声で行こうと思います。
しあわせを話す
認知症が進んでいる利用者と話す。その人の短期記憶は数秒もたない。そんな人に何かを伝えるとき、自分はあきらめの気持ちを胸に秘めるのだ。
どうせ伝わらない
それは文章を書く時の心構えでもある。何を書いても読まれないし、読まれるほどの文章でもない。へんなメッセージなんてゴミだ。そう考えて書くと、なんかいい評価だったりする。
認知症の人に言葉を伝える。それは無限に深い井戸を水で埋めていく作業だ。時間とエネルギーの無駄遣い。だけど今回は違った。響いたのだ。
それは昼下がり、自分は入浴担当で、ぐったりと疲れ切っていた。そこに認知症のnさんがやってきたので、ソファに誘導して横に座った。
「ああ、いい天気だねえ、こんな日は外で焼肉したいね」
なにも考えずにそう話した。「そうだね」とnさんはいう。
「ジンギスカンだよね、炭火と網でさ、ビール飲んで、おにぎりを食いながら最高だよね」
「そうだね」
「男の人は火おこしてさ、女の人はおにぎり握ってね、nさんはビール飲むの?」
「ちょっとだけだよ」
何気なく始めた会話。気が付くとコミュニケーションができている。俺達の頭の中には、晴天の下でジンギスカンを焼いている映像が共有されていた。奇跡だ。
こんな会話も、数秒後には忘れてしまう。だけど、気持ちは残っているだろう。nさんの全盛期を、花の時代を、しあわせを話した。介護の神髄はここにあると思った。
特養日記を読んだ
特養日記を全部読んだ。
著者は10年も特養で働いていた人とあって、かなりネタが濃いと思った。普通に漫画として面白い。介護業界で働く人や、介護をしている人なら絶対に笑うと思う。買って損なし。
介護殺人を読んだ
介護の本を読み漁っています。
今回はキンドルでこれを読みました。
介護の技術や認知症の知識などではなく、介護する人の疲弊や家族の愛について書かれているドキュメンタリー。特養の介護職員である私にとっても為になる内容だった。
介護する家族は苦しんでいる。自分の働いている施設にも「もうギリギリだった」とか「手をあげてしまいそうだった」というご家族がいる。介護は1人で背負い込んでしまってはいけないと思った。ムリがあるのだ。
1人の認知症のお年寄りを、1人が支えるのは不可能だ。なぜなら、それは24時間の重労働だからだ。
だからこそデイサービスやショートステイで介護しない時間を作る必要がある。そしていつか施設に入所するのが定番だろう。でも、現実的にはそううまくいかないことがある。施設は入居待ちの順番がえらいことになっているし、民間の老人ホームに入れる経済力のある人はマレだ。仕方ないから家で介護する。
それに毎日変化していく家族を見続けるのはつらい。認知が進むにつれ、一緒に生活するのは不可能になるだろう。
つまり、金が無ければデッドエンド。詰み。そんな状況が現れる。
介護の仕事をしていても、連続して働き続けるのは12時間が限界だ。でも、毎日やればちょっとづつ上手くなるし、手技も上がっていく。介護の生産性は家族でやるのとはくらべものにならないだろう。
常駐する看護師、認知症のお年寄りの為の建築物、体の専門家、健康的な食事、個別ケアはまだまだ発展途上だけど、介護の生産性は家族とは比べ物にならない。
悲しい介護殺人が起こらない為には、もっともっと、こんな施設が必要だ。
特養の相部屋なら月10万もかからない。もっともっと、こんな施設が必要なのだ。
だが、現実として人手が足りない。給料を上げればいいのかもしれないが、現状ではそうもいかないだろう。
この問題を社会はどうやって乗り越えていくのだろうか。きっと乗り越えていくのだと思う。介護の生産性はこれからもっと上がっていくはずだ。それをこれから楽しみに期待してる。
生産性を!